# s16: Workflow Runtime — オーケストレーションをコードに書く
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[s15](../s15_integrated_harness/) → `s16` → [s17](../s17_goal_loop/)
> *計画をチャットの中だけに置かない。* 順番はスクリプトが持ち、一歩ごとの判断はモデルが持つ。
>
> **Harness 層**: オーケストレーション — 単一 agent ループの上で、マルチ agent スクリプトを走らせる。
## 問題
あなたはすでに、ひとつのループの中でモデルにファイルを読ませ、コードを直し、エラーを見させることができます。ところが仕事によっては、**順番が最初から分かっている**ものがあります。次元ごとにレビューし、次に意地悪な検証、最後にまとめる——という具合です。その順番をチャットの記憶にだけ預けていると、モデルは途中で「完了」と言い、自分の宿題を甘く採点し、圧縮を何度か経ると「X を触るな」さえ消えます。
柔らかい会話は、並列も、結果の形の安定も、落ちてからの再開も支えきれません。もっとおしゃべりの上手なモデルが欲しいのではありません。**書き下ろされたオーケストレーション**が欲しいのです。
## 解決策
```text
あなたの会話 ──► Workflow(...) ──► 結果が一条で戻る
│
▼
スクリプト: agent / pipeline / parallel
│
▼
変数 + journal(半成品はここに。スレに詰め込まない)
```
ヘルパー(サブ agent)は相変わらず考えます。**スクリプト**がループ・分配・マージを持ちます。中間結果は変数と journal に置き、親の対話には入れません。
一言でいうと:**オーケストレーションを「知性」から「構造」へ移す。**

*左:汎用の固定パイプライン。右:このタスク向けに裁断したオーケストレーション。*
Claude Code には二つの扉があります。**動的**——モデルがこのタスク用に JS を書く(`script` / `scriptPath`)。**保存済み**——良いスクリプトを `name` + `args` で再実行。外側には SDK で先に書き切る静的オーケストレーションもあります。本章は **Python の教材用 runtime**(JS VM なし)です。考えは揃え、デモは「保存済み」の扉を使います。製品ではモデルはスクリプトを出せます——ここでは JS を走らせないだけです。
## 仕組み
**1. 三つの動詞**
```text
agent 一人のヘルパー、一件の仕事(schema で次に渡せる JSON も可)
pipeline 各 item が自分の段階を進む(既定。同期しない)
parallel 全部揃ってから先へ(バリア。多用しない)
```
失敗時:`parallel` のその枠は `null`。`pipeline` はその item を捨てます。艦隊は丸ごと沈みません。マージ前にフィルタしてください。
**2. 再開はノートで。チャット記憶ではない**
journal は `agent()` の**呼び出し順**で記帳します。再開は最長の未変更プレフィックスを再生し、最初の変更から先は全部ライブです。本番の JS runtime は `Date.now()` / `Math.random()` を禁じます——ノートがずれないように。教材スクリプトも決定的に書いてください。
```text
journal [A] [B] [C] [D]
再開 命中 命中 ✂ ライブ
```
**3. サンプル一つ:Fanout + Adversarial**
`review-changes` は「一つのパターン」ではありません。**Fanout** の中に **Adversarial** が入ります。次元ごとに `pipeline(audit, verify)`、検証で `parallel` に意地悪させ、残った finding だけ残します。
```text
correctness ── 監査 ── 検証 ──┐
security ── 監査 ── 検証 ──┤── confirmed
performance ── 監査 ── 検証 ──┤
style ── 監査 ── 検証 ──┘
```
```python
# code.py 抜粋 — 形だけ見ればよい
async def sample_workflow(ctx, args):
ctx.phase("Review")
results = await ctx.pipeline(DIMENSIONS, audit, verify)
confirmed = [f for r in results if r for f in r["confirmed"]]
return {"confirmed": confirmed}
```
艦隊は早逃げできず、著者は自分の審判にならず、トポロジも疲れたチャットのたびに書き換わりません。
よくある六つの形(パターン庫)

| パターン | 人の言葉 | 原語のスケッチ |
|------|------|----------|
| Classify-And-Act | 仕分けしてから適任へ | `agent` → 分岐 → `agent` |
| Fanout-And-Synthesize | 分けてやり、またまとめる | `pipeline` / `parallel` → 統合 |
| Adversarial Verification | 狐に鶏小屋を採点させない | 産出 → `parallel(verify)` → フィルタ |
| Generate-And-Filter | まず多く作り、それから篩 | `parallel(gens)` → フィルタ |
| Tournament | 一対一で優勝を決める | 審判 `agent` |
| Loop Until Done | 「まだ新しい?」なら続ける | `while` + 停止 + `budget` |
`review-changes` ≈ Fanout + Adversarial。調査系はよく 分配 → フィルタ → 検証 → 統合 と積みます。
動的 / 保存済み / 静的と公式原語図
```python
# 教材スケッチ
Workflow({ "name": "review-changes", "args": { "changes": "..." } })
# Claude Code はさらに: script | scriptPath | resumeFromRunId
```

信頼できない入力:読み書きを隔離
チケットを読む agent が、同時に PR を開ける鍵を持ってはいけません。読み手は読むだけ → 要約。信頼側は要約だけ見て動きます。
```text
バックログ → [隔離: 読 / 重複除去 / 要約] → [信頼: 実行]
```

計画を握るのは誰か。s06 は一回きりの委譲、s13 はメール箱つきの仲間、s15 は単一ループのチャット、**s16 はスクリプト + journal**、s17 は入り口で「全体は終わったか」と聞きます。普通の数ファイルの修正なら s15 か一つの s06 で足りることが多い。Workflow は token と調整のコストが要ります——**構造が一度の会話より長生きしなければならない**ときだけ手を伸ばしてください。
## 試してみる
```bash
python s16_workflow_runtime/code.py demo
python s16_workflow_runtime/code.py resume
```
一回目は Review → Verify を見てください。同じ run の二回目は `cached` がほとんど(理想は `agents=0 tokens=0`)。完全なホストに載せるなら引数なしで `code.py` を。
s15 はあいかわらずそのループです。ここに増えるのは `Workflow` ツールだけ。[s17](../s17_goal_loop/) は別の問いをします。もう止まっていい?